2000年  晩春

一 碗 の 茶 を


ことしは 遅い春 でした。

つばきが 咲くのも ゆっくりと 花ひらく のでした。

花の語らいを 偶然 耳にした私は

いそいで カメラのシャッターを きりました。

姉さん、蜂がこないあいだ に お話きかせて

と、いっていた ようなのです。

その つづき

あなたには お聞きになれる でしょう。



お茶をどうぞ

茶の葉を 摘んで 干して 臼で ひいた お茶を 抹茶 と 申します。

井戸の水を けさ 汲んできまして 茶釜にいれ、火にかけている ところです。

まず お菓子でも 召し上がれ。 百合ねのきんとん、蓮の実の甘なっとう も できたてです。

竹の ひしゃく、茶巾 茶せん に 箸楊枝、 それらは あたらしく 用意いたしました。. 

お茶碗は 一つだけ。お気にいるかどうか わかりませんが、猫掻き手の 茶碗です。

釜から 松風の音が 響くように なりました。わびすけの下手な点前 ですが、

さあ お茶がたちました。どうぞ ごゆっくり お飲みになってくださいませ。

椿 が お相伴 いたします。

 



金 海 茶 碗  小堀宗中箱 鵬雲斎家元外箱 (椿わびすけ蔵)



金海茶碗 

朝鮮茶碗の一種。御本茶碗に属す。
ごほんとは御手本のことで、桃山より江戸期にかけ
日本から朝鮮に御手本(切形)を送って釜山その他
の窯で焼かせたものと伝えられる。
時に金海、金の文字が彫られているものがあり、
このことから茶碗の名称が生まれたという。



猫掻手

粉白色で、うす赤い斑があり、桃形や州浜形
のものが多く、その胴にするどいひっかき傷が
つけられたものがある。引っかき傷のあるもの
は特に猫掻き手とよばれている。
金海茶碗の名物に、「西王母」 「藤浪」 「東方朔」
などがある。




わびすけのたわごとです。

茶が主で 器は従のもの。 花が主で 入れ物は従のもの。 人が主で 名前は仮のもの。

自然からの いただきものが 主人公。
 
でも、ひとの造ったものにも しっかりした良いものがあると、あなたは おっしゃって くださいますか。

ありがとうございます。 たいへん不加減で。 

もう一服、 いかが で しょうか。



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